今はサラリーマンだけど医療の仕事に就きたい・・・
医療の資格が気になるけど、どうやって取ればいいんだろう?
働きながら医療の資格って取れるのかな?
30歳を超えて学校に行くって・・・どうなんだろう?
なんて悩んでいませんか?
私は、30代でサラリーマンを脱サラして、理学療法士の資格を取りました。
私も、医療の資格ってめちゃくちゃ難しそうなイメージを持っていたんです。
子供の頃から、まともに勉強をした事がなく、地域でも有名な偏差値の低い高校しか出ておらず、何の取柄も能力もない、こんな私が資格を取れたんですから、やる気さえあれば誰でも狙えます!
今回は、私が理学療法士の資格を取るまでの実体験をお話したいと思います。
この記事を最後まで読むと、
- なぜ医療の資格を目指した?
- 資格の種類は何を基準に選んだ?
- どうやって学校を選んだ?
- 受験勉強はどうだった?
- 入学試験はどんな感じ?
- 学校生活は何が大変?
という疑問の答えを、リアルな私の実体験から知る事ができます。
長い文章の記事ですので、ポイントだけ知りたい方は、下の目次から興味のある見出しをタップして下さい。
医療の資格を目指す!

では、まず私がなぜ脱サラしてまで、なぜ医療の資格を取ろうと思ったのか?
と、いうところから話したいと思います。
会社が倒産するって?これからどうやって生きていけばいい?
私は、建築資材の営業マンとして、地方都市の会社に勤めていました。
入社して7年ほど経った頃、ある噂を同僚から耳にしたのです。

おい。知ってるか?うちの会社、倒産するかもしれないって噂になってるぞ。

うそ!?確かに数年前から比べると売上げはガタ落ちだけどな・・・

もし倒産したらどうする?

そうだな・・・
手に職も無いし・・・
どうしよう・・・
手に職どころか、何の特技も無い私は、

もし会社が倒産したら・・・
どうやって生活すればいいんだ・・・
と、真剣に悩みました。
結局、倒産は只の噂に過ぎなかったのですが、会社に依存している今の自分に気付き、今後の人生を深く考えるきっかけになったのです。
手に職をつける仕事って何?

手に職をつける仕事って・・・いったい何があるんだろう・・・
手に職をつける仕事で、私がイメージできたのは、
- 土木機械のオペレーター
- 大工
- 調理師
- 美容師
など・・・
そんな程度でしたが、私がなりたい職業としてはどれもピンときませんでした。
自分に何ができるのか?すら、わからない状態から、手に職をつける手段を探していました。
ある日突然・・・ひらめきが降りてくる!
そんなある日、障害者の子供達が通っている施設のトイレ工事の仕事が入り、私は打ち合わせのために、ご相談いただいた障害者施設へ向かいました。
打ち合わせには、施工業者や事務長の他に、白衣を着た30代ぐらいの男性が同席していました。
交換した名刺には”理学療法士”と書いてあります。

理学療法士?
いったい何者なんだろう?
打ち合わせでは、その理学療法士の男性が中心になって、トイレの間取りや便器の寸法・形状など詳しく指示されます。
打ち合わせも終わり、その理学療法士さんに挨拶をして帰ろうとすると、

良かったら子供たちのリハビリを見ていきませんか?
とおっしゃって下さったので、勉強のため見学させてもらう事にしました。
訓練室に入ると、車椅子に乗った子供達が5人ほどいて、治療台の上で手足の曲げ伸ばしをされている子供や、平行棒につかまって立っている子供もいました。
平行棒に立っている子供は、横棒につかまって歩き出すところでした。
装具を着けて、おぼつかない足どりでゆっくり歩きだすと、すぐ横にいた理学療法士さんが、

すごいぞ!!
最後までがんばれ!!
と、声をかけています。
テレビで見た事のあるリハビリの光景です。
私は、障害を持った子供が必死で歩いている姿に感動してしまいました。
そして、それを励ましている理学療法士のかっこいい姿に惚れ込んでしまったのです。
その時、私の頭にひとつのひらめきが降りてきました。

理学療法士じゃなくても、医療の世界なら安定しているし給料も良さそうだ!
何より「医療関係で働いています!」って聞くと何かカッコいい!
よし!医療の資格を取るぞ!
と、決心したのでした。
実は、この時に出会った理学療法士の方は私と同い年で、学生時代からいろいろ相談に乗ってくださり、今も親交があります。
普段は、オヤジギャグばかり言ってるただのウザいおっさんですが(笑)、リハビリの現場ではいつも真剣で、子供達への愛にあふれた本当に尊敬できる先輩です。
この方の仕事を見ていると、今でも「理学療法士になって良かった・・・」といつも思います。
資格の種類を選ぶ!

こうして、私は医療の資格を取る決心をしたのですが、

医療の資格って何があるんだろう?
自分に合った仕事はあるんだろうか?
と、また悩んでしまいました。
医療の仕事ってどんなものがあるのか?
ただ悩んでいても仕方ないので、まずはインターネットで検索しまくりました。
インターネットで検索すると、
- 病院の現場で働くのなら、看護師・リハビリ系(理学療法士・作業療法士など)
- 医療技術系なら、臨床工学技士・臨床検査技師など
- 事務系なら、医療事務など
- 独立開業系なら、柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師など
と、たくさんの医療の仕事がありました。
※ 医療の仕事の種類は、以下の記事の後半にまとめています。
もくじの中の見出しで「医療・介護で他の資格を狙いたい!」をタップして下さい!

自分に合った仕事は何なのか?
私は勉強もできないし、何の取り柄もありませんが、子供の頃から人とのコミュニケーションだけはよく褒められていました。
自分ではコミュニケーションが得意だと思った事はありませんが、営業の仕事に就いたのも高校時代の先生に、

君はコミュニケーションが得意だから、
営業とか向いてるんじゃない?
と、勧められたのがきっかけでした。
医療の資格の中で、コミュニケーションを必要とする仕事は・・・
医療技術系である、臨床工学技士・臨床検査技師などは患者さんと直接会う事はありません。
事務系の仕事である医療事務は、受付でもない限りは、患者さんとのコミュニケーションをそんなに必要とはしません。
独立開業系の仕事である、柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師に至っては、独立開業するような勇気も甲斐性もありません。
という事は、看護師かリハビリ系の仕事という事になります。
看護師さんは夜勤もあって大変そうなので、消去法でいくとリハビリ系が一番良さそうだという結論に至りました。
そこで調べてみると、リハビリ系の専門学校で私が通える距離の学校は、理学療法士の専門学校しかなく、必然的に理学療法士の資格を狙うしかありませんでした。
その後、本屋で雑誌を読んでいると、理学療法士の求人広告が目に入りました。
仕事内容は専門用語ばかりで全くわかりませんでしたが、土日祝祭日休みで、収入は・・・なんと!年収800万円と書いてあります!

年収800万円か!
何が何でも理学療法士になってやる!
この広告を見て、私の心は完全に固まりました!
実際に理学療法士になってから分かった事ですが、リハビリ系の職種では理学療法士が一番求人が多いのです。
病院では作業療法士の求人もたくさんありますが、高齢者施設やデイケアなどでの求人は理学療法士が全体の7割以上を占めます。
言語聴覚士や視能訓練士に至っては、ほとんど大きな病院でしか求人がありません。
偶然近くに理学療法士の学校しか無かった事で、理学療法士を選ぶしかなかったわけですが、今ではそれが大きなメリットになっています。
学校を選ぶ!

理学療法士の資格を取る事で気持ちは固まったのですが、専門学校なら3年間は通わないといけません。
私が通える専門学校は1校しかありませんでしたので、その学校に私は入れるのか?勉強について行けるのか?が気になりました。
一般入試か・・・それとも社会人推薦か・・・
私が選んだ専門学校の入学試験は、”一般入試”と”社会人推薦入試”の2つの受験方法がありました。
一般入試は、
- 高等学校を卒業した者、又は高等学校卒業見込みの者
- 高等学校卒業と同等の学力があると認められる者(高卒認定試験)
という条件を満たした上で、
- 学科試験(国語・数学・英語)
- 小論文
- 面接
- 集団討論
が、試験内容として実施されます。
一方、社会人推薦入試の方は、
- 高校を卒業している者
- 現在、働いていることを証明できる者
- 就業している会社から推薦が受けられる者
という条件をクリアすれば、一般入試にある学科試験が免除され、
- 小論文
- 面接
- 集団討論
だけで試験が行われる受験制度でした。
学科試験が免除されるのは、非常に助かるのですが・・・
上司に推薦文なんか頼めませんし、何より受験しようとしている事が会社にバレたら会社に居られるわけがありません。
仮に、会社にバレたとしても、学校に合格できればいいですが・・・合格できなかった時は、会社でどんな顔をしていればいいか・・・。
私としては、専門学校の受験に合格できなかったら、素知らぬ顔をしながらそのまま働き、合格してから辞表を出すつもりだったので、社会人推薦入試は諦めて一般入試で受験するしかありませんでした。
年齢の制限はあるのか?
とりあえず専門学校に入学するのに、年齢制限はあるのか?という事が気になりました。
インターネットで調べてみると、国家試験に年齢制限は無く、学校の受験基準でも年齢の制限はありませんでした。
脱サラの人は他にもいるのか?
私のような、医療とは全く関係のない業界から、脱サラして入学してくるような人は、他にもいるのか?という疑問が湧いてきました。
脱サラまでして資格を取ろうとするような人が他にいなければ、さすがに失敗するでしょうから、入学は諦めよう・・・とも考えました。
そこで、私が目指している専門学校へ電話して聞いてみる事にしました。

もしもし。
私は貴校の受験を考えている者なのですが・・・
医療とは関係の無い業界から受験される方はいらっしゃるのでしょうか?

はい。
毎年、社会人推薦で30人ほど、
一般入試なら20人ほどは
他の職業から受験されますよ。
という返事が返ってきて、他の業界からもたくさん受験する人がいる事にホッとする一方、社会人推薦入試で30人、一般入試で20人も社会人から受験するんだったら、倍率はけっこう高いな・・・と、また悩みが増えました。
結局、私が受験した一般入試では、社会人から受験した人数は16人で、合格できたのはその中の4人。
社会人だけの倍率でいうと4.0倍とまあまあ狭き門でした。
私はたまたまラッキーで合格できましたが、社会人推薦が受けられる方は、社会人推薦で受験した方が楽に合格できるでしょう。
働きながら学校に通えるのか?
まず、学費は学校の入学案内で調べてみると、400万円ほどかかりそうでした。
この他にも、学校に3年間通わなければいけませんから、その間の生活費も必要になります。
3年間で必要な費用を月額で計算すると、だいたい月に学費が11万円ほど、生活費が極貧覚悟でギリギリに絞っても13万円ほどは必要になります。
学費は、日本育英会や日本学生支援機構という機関や病院が貸してくれる奨学金があるようでしたので、それを借りれば何とかなりそうです。
問題は生活費です。

働きながら夜間部で学校に通えば何とかなるだろう!
と思っていたのですが・・・
私が通える理学療法士の専門学校には夜間部が無かったのです。
昼間部に通うのなら、夕方からの仕事をする必要があります。
さっそくインターネットで調べてみると、
- 居酒屋
- コンビニ
- ネットカフェ
- カラオケボックス
- 工場
- 警備
- デリバリー
- 運転代行
- ガソリンスタンド
など、けっこういろいろな仕事がある事がわかりました。
贅沢を言わなければ、夕方からの仕事に就ける事は難しくないのがわかっただけで安心しましたし、まだ試験に合格したわけでもなく、学校への入学が決まってから改めて探そうと思いました。
入学が決まった後、ビルの夜間警備で事務所に常駐さえしていれば来客と電話の対応だけで済むというアルバイトがあり、そこで働く事に決めました。
学校の授業が始まってから分かった事でしたが、学校の授業は、宿題や明日の授業までに憶えていかなければいけない事が恐ろしく沢山あり、学校が終わってからの暗記の方が勉強の本番と言っても過言ではない状況でした。
ここでラッキーだったのが、私がしていた警備のバイトは、来客や電話が無い時は何もする事がなく、その時間を使って勉強ができたんです。
居酒屋やコンビニのバイトだったら、どうなっていたんだろう・・・と、働かせてもらっていた警備会社と自分の幸運に感謝しました。
学校では、どんな勉強をするのか?
医療の資格と聞くと、医学的な事や法律など、難しい勉強をするイメージがありましたので、私のような出来の悪い頭で授業についていけるのか?という心配がありました。
ネットで調べると、
- 解剖学
- 生理学
- 運動学
- 心理学
- 神経科学
など…
という医学的な科目から、
- 英語
- 物理学
など…
という普通科目。
- 教育学
- 統計学
- 情報処理
など…
という科目まであり、これ以外にも約30科目ほどの授業があるようでした。

俺の頭でついていけるんだろうか・・・
と、かなり心配になり、

やはり・・・俺には無理かもな・・・
と、落ち込んでしまいました。
落ち込んでいても仕方ないので、思い切って私が目指している理学療法士の学校の生徒さんに直接聞いてみようと決心しました。
学校の前まで行くと、生徒さんらしき若者が正門から出て来ました。
私は、そっと後ろから付いて行き、思い切って声をかけてみました。

す・すいません。
ちょっと話を聞かせてもらえませんか?

は?なんでしょう?
突然、声をかけられ怪訝そうな顔をしている学生さんに事情を説明し、食事を奢らせてもらう代わりに話を聞かせて欲しいと頼むと、半信半疑の様子ではありましたが、話を聞かせてもらえる事になりました。
学生さんの話では、医学系の授業はレベルも高く、めちゃくちゃ難しいとの事。
中には、早稲田大学のような一流大学を卒業している人もいるらしいのですが、そんな優秀な人達でも、かなり手こずっているらしいのです。
ただ、一流大学を卒業している人だろうが、偏差値の低い高校しか出ていない人だろうが、ほぼ全員が医学の勉強は初めてなので、

スタートラインは、みんな一緒ですよ!
と、学生さんが言ってくれた事で、少しだけ不安が払拭でき、またやる気を復活させる事ができました。
授業は暗記する事が山ほどあり、1年生の最初から「骨格筋400個の名前を全部覚えろ」とか「脳神経12対の名前と働きを明日までに憶えて来い」とか、毎日が暗記力との戦いでした。
年齢で暗記力が落ちている事は仕方ないと思いましたが、暗記するのにもテクニックがあり、私が集中して2時間かかってやっと憶えた内容を、進学校出身の若者達は休み時間におしゃべりしながら15分ほどで憶えるという事がたびたびありました。
確かに「スタートラインはみんな一緒」でしたが、幼い頃から勉強している連中との差は”勉強の技術”という意味で大きなハンデでした。
ちなみに、この時の学生さんは入学後に先輩として再会しました。
私の事を憶えていてくれて、在学中は定期試験の過去問を渡してくれるなど、めちゃくちゃお世話になりました。
受験勉強から入学試験当日!

こうして、何とか学校に通える見込みは付いたので、入学試験に向けての勉強を始める事にしました。
受験勉強は睡魔との戦い・・・
一般入試で受験する事に決めたので、学科試験の科目である、国語・数学・英語を勉強しなければなりません。
小学校入学から高校卒業まで、赤点を取らない程度でダラダラとしか勉強をした事が無かったので、実際に勉強を始めてみるとノートの書き方すら分からない有様でした。
とりあえず、専門学校受験向けの参考書を買ってきたのですが・・・チンプンカンプン。
高校3年生のレベルでは全くわからない状態でしたので、高校1年生の参考書から勉強し始めました。
こうして受験勉強を始めたのは良いのですが・・・最大の敵は睡魔です。
仕事が終わって帰宅してから入浴し、夕食を食べ終わったらすぐに勉強に取り掛かっていましたが、机に向かったとたん睡魔が襲ってくるのです。
襲って来る睡魔は強敵で、

ちょっと30分だけ仮眠を・・・
なんて言ってたら、目を覚ますのは明日の朝の目覚まし時計が鳴ってからです。
そこで、私が工夫したのは、
- 夕食は勉強が終わってから
- 暖房はつけない
- 勉強は立ってやる
という睡魔撃退3か条でした。
この睡魔撃退 3か条を守れば、ギリギリですが睡魔との戦いにもなんとか勝利できました。
ただ、食事が夜中の2時とか寝る前に食べる事になりますので、体重がどんどん増えましたし、立って勉強していたので腰を痛めました。
試験当日は全く緊張せず
受験の勉強を続けている間に、

俺みたいなバカが、今さら受験に合格できるわけがない・・・
と、受験に対する不安が大きくなっていきました。

まあ、とりあえず今の会社にいればいいし、今年の受験は様子見で受けよう。
一回受けて受験の傾向をみて来年合格すればいいや。
という気持ちで入学試験当日を迎えたのです。
落ちるつもりで受験したわけですから、全く緊張はしませんでした。
学科試験も小論文も落ち着いて解けましたし、面接もリラックスして問答でき、試験官の先生方から笑いを取れるほどでした。
集団討論に至っては、合格するべくガンガン語る他の受験者の方々に混じって、「うんうん」と首を振りながらほとんど発言はせず、「おー!なるほど!」と他の受験者の意見に感心する情けない状態でした。
こうして受験が終わり、本番である来年の受験に備えて、また勉強を始めました。
合格者発表の日、まあ一応確認だけはしておこう!と、学校に出かけました。
合格発表の掲示板で自分の番号を確認すると・・・
な・なんと!合格していたのです!!
こうして、予期せぬ形で私の学校生活が始まる事になったのです。
入学試験は来年の準備として受けたため、全く緊張せずリラックス状態で受けた事をお話ししましたが、
実は、このリラックスがかなり功を奏しており、入学後、面接官をして下さっていた先生に
「なぜ私にみたいな者が合格できたんでしょうか?」
と質問すると、
「理学療法士という仕事は、患者さんとのコミュニケーションが非常に大事で、治療する時は患者さんにリラックスしてもらう必要があるし、病気の悩みを相談できる関係を作らなければいけない」
「君は、みんながガチガチに緊張している面接という大舞台で非常にリラックスしていて、あんな場で私達を笑わせるというすばらしいキャラクターを持っていた」
「更に、理学療法士は自分の意見より患者さんの主張に耳を傾ける事ができないといけないが、集団討論の場で必死に自己主張を押し付けようとする人達の中、君は決して自己主張をせず他人の意見に耳を傾ける事に集中していた」
「そんな君の姿が理学療法士の適性に合っていると判断したんだよ」
と、こんな話をして下さいました。
まさか、落ちるつもりだったからリラックスしていた・・・なんて事は言えませんでしたが(笑)
専門学校入学!そして卒業!

こうして、やっと入学を迎えたわけですが、学校生活が始まると新たな悩みが出てきました。
授業は暗記が大事!
授業は、専門学校の教諭の先生に加えて、近くの医科大学の教授やドクターが来て教えて下さるのですが、どの授業も始めて見聞きする内容ばかりで、最初は全く理解ができませんでした。
解剖学・生理学・運動学・病理学・精神医学などなどなど・・・
人間の体や心の事を中心に、医療・福祉の制度や法律の事、物理学・統計学など・・・
とにかく暗記しなければ始まらない内容ばかりでした。
前日に、明日の授業の内容を暗記して予習しておかなくては、授業に付いてさえいけません。
時折、授業が始まる前に抜き打ち小テストが行われ、

50点以下の者はいますぐ退学した方が身のためだ!
なんて厳しい事を言われる先生もいました。
実技の授業ですら、実技内容がすでに頭に入っている前提で行われるため、全ての授業に対して気を抜けませんでした。
平日の夜間はバイトをしているので、仮眠として2時間程度の睡眠時間でしたが、休みの日でも暗記しなければいけないので、3年間はずっと4時間以上は眠った事がありませんでした。
私がラッキーだったのが、夜間のバイトは事務所に常駐して来客と電話の対応だけでしたので、時間だけはたっぷりあり、給料をもらいながら勉強ができた事です。
もし、自宅で勉強していたのなら、きっとダラケて睡魔との戦いになっていたでしょうが、仕事中に居眠りするわけにもいきませんので、逆に集中できました。
勉強中は、受験勉強の時の3か条を実践していましたが、これを見ていた来客の方が、
「あの警備員は食事もせず、いつも立ったまま仕事をしている!なんて真面目な奴だ」
と、警備会社の上司に語って下さり、めちゃくちゃ褒められた。というエピソードもあります。
俺は保育園の先生か?
入学した当初は、同級生の事でも苦労しました。
同級生のほとんどは、18~19歳の若者達で、32歳の私とは14歳も離れており、確実にジェネレーションギャップを感じていました。
入学式を終えた帰路、

あんな若者達と上手くやっていけるのかな?
と、一抹の不安をおぼえながらも、

まあ、会社でも19歳の部下と上手くやっていたし、何とかなるでだろう!
と、あまり深く考えないようにしていましたが、実際に学校生活が始まると予想以上に大変でした。
会社で一緒に働いていた部下は19歳とは言っても、1年間は社会人を経験している人間です。
学校で同級生となった若者達は、部下だった若者と同じような年齢でも、社会人を経験した事の無い、高校を出たばかりのただのクソガキどもに過ぎなかったのです。
教室で暴れまわるわ・・・
頻繁にイタズラを仕掛けてくるわ・・・
決められた事は守らないわ・・・
もう、やりたい放題・・・無茶苦茶です・・・
私はいつも

こら~!お前ら!いいかげんにしろ!
と、怒鳴ってばかりでした。
まるで保育園の先生みたいな毎日・・・
入学して半年ほどは、

こんな毎日が3年間も続くのか・・・
なんて、学校が終わると精神的にまいっていました。
この悩みを先生に相談すると、
社会人経験者が抱える悩みとしてはいつもの事で、

社会人としての教育は私達の仕事だから!
君はしっかり勉強に集中してくれ!
と、おっしゃって下さった事で、少しは楽になりました。
それから日々を重ね、だんだん慣れてくると、若者の感覚に私も順応していき、
何人かで集まって夜通し語り合ったり、恋愛の相談に乗ってあげたり、勉強を教えてもらったりしているうちに、クソガキどもが弟や妹のように可愛くなってきました。
それから3年間、

こら~お前ら!いいかげんにしろ!
という私のキャラクターは変わりませんでしたが、それは怒りではなく、可愛い弟や妹を叱っている兄のような気持ちになっていました。
学生時代はただのクソガキどもだった同級生も、今では役職付きのベテラン理学療法士です。
中には、大きな病院の部長にまでなっている同級生も居ますが、顔を合わせれば今でもクソガキ弟とうるさい兄の関係です。
学生時代はただのクソガキだった同級生が、
「近頃の若い連中は・・・」
なんて、部下の愚痴を偉そうに語るの見ると吹き出しそうになります。
地獄のインターン実習
3年生になるとインターン実習が始まります。
インターン実習とは、病院の現場に通って、学校で学んだ理学療法を、実際の患者さんを相手に勉強させていただくものです。
私が通っていた専門学校のインターン実習は3ヶ月間が2回あり、その間はバイトが出来ないので、貧乏もさらに極まっていました。
マヨネーズをかけたご飯だけの食事で毎日を乗り越え、シーチキンでも食べる事ができた時には、嬉しさのあまり無意識にニヤついてしまう・・・という極貧の生活を送りました。
この極貧生活よりも、地獄なのがインターン実習の内容で、毎日提出させられるレポートの作成で睡眠時間はほとんど無く、病院でバイザー(担当として付いて下さる理学療法士)は鬼に見えたものです。
私が1回目のインターン実習を受けさせていただいた病院のバイザーは厳しくて有名な方で、
質問された事に上手く答えられないと、

もう帰っていいぞ。
留年して勉強し直して、また来年も来ればいい。
と、口癖のように言われるのです。
それも無感情で冷静に・・・
私の2学年上の先輩方では、心療内科(精神科)のカウンセリングを受けた方が8人も居た・・・
という伝説があるぐらい、厳しいのが当たり前のインターン実習でした。
後日談
なぜこんなにインターン実習が厳しいのか?を理解できたのは、私がプロになってから初めて学生のバイザーを担当した時でした。
3年生のインターン実習は、言わばプロになった時のリハーサルみたいなものです。
国家試験に通れば、来年からは患者さんからお金をいただいて、誰の力も借りず1人で患者さんの治療にあたらなければいけないわけですから、実際に病気を治療するのに必要な知識や技術が、3年生の時点で頭に入っていないと、現場で恥をかくのは学生自身です。
更に、実際に病気で苦しんでいる患者さんの体をお借りして、勉強させていただくわけですから、必要な知識や技術が身に付いていない時点で、患者さんに申し訳ないからです。
ただし、今では時代が変わり、学生さんに優しくするよう学校側から要請がありますので、私たちが経験したようなパワハラまがいの厳しいインターン実習はもう行われていませんので、ご安心ください。
国家試験は超プレッシャー!
こうして学校で3年間勉強し、地獄のインターン実習も乗り越え、いよいよ国家試験を受ける事になりましたが、この国家試験こそが最大の難関でした。
専門学校での3年間は、国家試験を受けるために必要なただの条件でしかなく、国家試験に落ちれば、これだけ苦労した3年間が無駄になるのです。
もちろん、国家試験に1回落ちても何回でも再チャレンジできるのですが・・・
1回目の国家試験の合格率は毎年90%以上ですが、2回目は60%、3回目は40%と再チャレンジを重ねる毎に難しくなっていきます。
学校の勉強に付いて来れない生徒はバンバン留年させられますし、自主退学する生徒もたくさんいます。
私が入学した時の同級生は64人でしたが、卒業する時は41人にまで減っていました。
結局、1回目の90%以上という合格率にしても、勉強に付いて来れない生徒は3年間で振り落とされて、国家試験に合格できるレベルの生徒だけが残るので、90%以上という高い合格率になるのです。
それだけに、国家試験のプレッシャーは大きく、私の3年上の先輩の中で、国家試験のプレッシャーに耐え切れず自ら死を選んだ人もいたほどです。
私は成績があまり良くなかったので、国家試験の模擬試験では、ずっと不合格組でした。
国家試験の本番が迫ってきて最後の模擬試験でも、不合格組から抜け出せず、毎日補習を受けるほどヤバい状況でした。
そして、国家試験の本番当日がやってきました。
前夜は緊張でほとんど眠れず朝を迎えたので、体調は最悪でした。
午前中の試験開始のベルが鳴り、試験問題を解き始めると・・・
不思議なことに、どんどん解けるではありませんか!
ひとつも解らない問題は無いまま最後の問題を解いても、残り時間は30分以上ありました。
解答を3回見直し、午前中の試験は終了しました。
午後の試験も午前中と同じペースで解け、少し居眠りする余裕すらありました。
帰りのバスでは、国家試験の自己採点をしたのですが、余裕で合格圏内でした。
最後まで不合格組だった私を、先生達も心配して下さっていたようで、涙ぐみながら喜んで下さった光景は一生忘れられない思い出となりました。
正式な国家試験の結果発表では、もちろん合格しており、こうして”医療の資格を取る!”という私の夢がようやく叶ったのです。
この国家試験の模擬試験では最後まで不合格組でしたが、本番の試験では学年で2位の点数を取れていました。
この事が、
「諦めなければ何とかなる!」
という自信を作ってくれました。
何事にも自信の無かった私が、この自信を手に入れた事で、人生の全ての事に対して大きな変化を生んでくれたのです。
就職活動そして卒業
国家試験が終わったら、学校のカリキュラムも全て終了し、学校でも何もする事が無いので、のんびりしていました。
もちろん生活費を稼がなければいけないので、バイトには復帰しましたが、睡眠は学校で十分とれました。
そんなのんびりした日々も束の間、間もなく就職活動が始まりました。
私が資格を取った頃は、リハビリ全盛の時代で、41人の卒業生に対して300件以上の求人がありましたので、就職先は選び放題です。
同級生達は、整形・脳神経・小児・高齢者など、これから理学療法士として自分が目指す道をもとに就職先を選んでいましたが・・・
私は元々、金に目が眩んでここまでのモチベーションを保ってきたわけですから、理学療法士として目指す道など考えず、収入面だけを重視して就職先を探しました。
理学療法士の資格を取る!と心を固めた時の年収800万円が基準です!
しかし・・・どの求人を見ても年収は350万円程度・・・
あの日に見た求人広告が特別だったのか・・・管理職の求人広告だったのか・・・それとも夢だったのか・・・
今はもう闇の彼方ですが、私は騙されたような気持になり落ち込みました。
ただ、あの広告がここまでの苦難を支えてくれたのは間違いありませんから、

騙されたのではなく、神様が私のモチベーションを作ってくれたのだ!
と、気持ちを切り替え、高収入はあきらめてインターン実習の時に誘って下さった病院に就職を決めたのです。
就職先も決まり、やがて卒業式を迎えました。
卒業式では、今までの苦労を思い出し涙が止まりませんでした。
それに加えて、

人生の先輩として、いろいろ助けてもらいました!
これは、みんなからの感謝の気持ちです!
同級生のクソガキどもが、サプライズで手作りの感謝状を贈ってくれたのです。
あまりの感動に、私は恥ずかしげもなく大声で泣き、クソガキどもを順番に抱きしめていました。
この卒業式で、今まで苦しかった事がすべて報われ、私の”医療の資格を取得する”という人生の大事業は完結したのでした。
最後に
「もし今日が人生最後の日だとしたら、今やろうとしていることは本当に自分のやりたいことだろうか?」
アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズの名言です。
医療の資格を取ると決めた時、友人も兄弟も親でさえも「無理だよ」と反対されました。
しかし、他人の言葉より自分を信じて挑戦した事で、資格を手に入れる事ができました。
理学療法士になって18年経ちましたが、あのとき挑戦してくれた自分に感謝しています。
資格取得に挑戦した事で手に入れたのは、理学療法士の資格だけじゃなく、自分への自信も手に入れました。
そして、仕事だけじゃなく、人生が大きく変わりました。
今も迷っているあなた。
失敗を恐れずに、とりあえず半歩でも前に進んでみましょう!
もし、失敗したとしても”逃げずに挑戦した!”という大きな宝物を手に入れるはずです!
ここまで読んで下さったあなただけは、人生の最後の日に後悔しないようにして下さい。
長い文章を最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。


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